実は奥が深い銀河の形

銀河
Credit: Galaxy Zoo

皆さん、こんにちは。皆さんは銀河というとどんな形を思い浮かべますか?綺麗な渦巻きをしているもの、大きな楕円形のもの、アメーバのような崩れた形をしたもの・・・宇宙には多様な銀河が存在しています。

今日は銀河にはどんな形があるのかを見ていきましょう。ただの形と思って侮ってはいけません!意外と奥が深い世界があなたを待っていますよ。

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ハッブルの音叉図

銀河は大きく分けて、

  • 渦巻銀河
  • 楕円銀河
  • 不規則銀河

の3種類に分類されます(細かく分けるともっとあります)。これは望遠鏡で多数の銀河を観測して現代天文学の礎を築き上げた、エドウィン・ハッブルにより分類されました。ハッブルは、銀河の形態を以下の「音叉図」としてまとめました。

ハッブルによる銀河の音叉図。当時は左側の楕円銀河から右側の渦巻銀河へ進化すると考えられていた。Credit: NASA, ESA

発表された当時、ハッブルは楕円銀河から徐々に渦巻銀河へ進化してゆくと考えていました。この音叉図も、一番左にあるE0という丸い楕円銀河から右側に向かって少しずつ扁平形になり、そして渦が形成され徐々に渦も極端になるという進化の様子を表すものでした。

ちなみに、この音叉図でSaからScは「バルジ」と呼ばれる銀河中心から腕が直接生えている渦巻銀河、SBaからSBcはバルジに棒が突き刺さり、棒から腕が生えている棒渦巻銀河をそれぞれ表しています。私たちの天の川銀河は、SBbまたはSBcのような棒渦巻銀河だと考えられています。

しかし、誕生したばかりの銀河だとハッブルが推定した楕円銀河には年老いた星ばかりが存在し、一方で渦巻銀河には若い星が多数存在する事が後の観測で判明しました。そのため、現在では(棒)渦巻銀河というのは比較的若い銀河で、(棒)渦巻銀河同士が合体・衝突をすることにより楕円銀河が形成されると考えられています。

ちなみに、私たちの天の川銀河は棒渦巻銀河とお話ししましたが、天の川銀河のお隣にあるアンドロメダ銀河は渦巻銀河です。そして、よそ40億年後には天の川銀河とアンドロメダ銀河が衝突して一つの楕円銀河になると考えられています。もっとも、40億年後には太陽が寿命を迎えているので、私たちが他の星に移住できていない限りは関係のないお話ですね(笑)

ハッブルの銀河進化の描像は間違っていたのですが、渦巻銀河と楕円銀河への分類は非常に便利でした。今でもハッブルによる銀河分類は「ハッブル系列」と呼ばれて用いられています。

余談ですが、ハッブルの間違いは今でも銀河の呼び方の中に残っています。ハッブルが誕生直後の銀河だと思っていた楕円銀河は「早期型銀河(英語だとearly-type galaxy)」、進化過程の最後だと考えた渦巻銀河は「晩期型銀河(late-type galaxy)」と今でも呼ばれています。実際の進化過程では渦巻銀河が早期、楕円銀河が晩期なのですが、ハッブル時代の名残として今日でも論文でこの呼び名が使われています。紛らわしいので、いずれ誰も使わなくなる呼び方かもしれませんね!

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近傍宇宙での銀河の形

さて、ハッブル系列を見て何か不思議に思うことはありませんでしたか?・・・そうです、実はハッブル系列には不規則銀河が含まれていないのです!これはいったいなぜでしょうか?

私たちの近くの宇宙では、明るい銀河であれば形は概ねハッブル系列のどれかに当てはまります。これは、ハッブル自身がこれらの明るい銀河を観測してハッブル系列を作り出したからに他なりません。

それでは、ハッブルの頃には暗くて観測のできなかった銀河はどういった形をしているでしょうか?なんと「矮小銀河」と呼ばれる暗くて小さな銀河のほとんどは、ハッブル系列に当てはまらない不規則銀河なのです!

明るくて大きい銀河と比較して暗くて小さい銀河の方が圧倒的に数が多いので、実はほとんどの銀河はハッブル系列には当てはまらないのです。私たちの近くの宇宙において、ハッブル系列に分類できる銀河というのは明るくて大きなごく一部の銀河だけです。それでは、より遠くの宇宙ではどうなっているのでしょうか?

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遠方宇宙での銀河の形

より遠くの宇宙においては、残念ながら矮小銀河が暗すぎて観測できません。ですので、ここでは明るくて大きい銀河に限って話を進めていきます。

遠くを見るという事は、過去の姿を見るという事

遠方宇宙の銀河を見る前に、一点だけ覚えて欲しいことがあります。それは、宇宙で遠くを見るということは、過去の宇宙の姿を見ることと同じだというです。

仮に1光年先にある天体を観測した場合、私たちの元に届いた光というのは一年前にその天体が発したものです。つまり、私たちは一年前のその天体の姿を、一年かけて私たちの元にやってきた光を通して見ているのです!ですので、1光年遠くの宇宙を観測する = 一年前の宇宙を見る、ということを覚えておいてくださいね!

79億年以前の銀河は不規則銀河が多い

遠方の宇宙では、銀河は一体どんな形だったのでしょうか?実際の観測データを見てみましょう。

ハッブル宇宙望遠鏡で観測された、様々な時代の銀河。およそ79億年前から渦巻銀河が見られるが、それより遠方では不規則な形態の銀河ばかりである。Abraham & van der Burg (2001, Science, 293, 1273) より引用(一部改定)。

上の図はハッブル宇宙望遠鏡で観測された、様々な時代の大きくて明るい銀河です。79億年前までの銀河は、私たちの見慣れた渦巻銀河が多く見られますね。一方で、それより昔の銀河は形がぐちゃっとした不規則銀河ばかりです。このように、遠方宇宙では私たちの近くの宇宙とは明確に銀河の形が異なるのです!

なぜ誕生間もない遠方の銀河の形は不規則で、時間が経つにつれ綺麗な渦巻きが形成されるようになるのかはまだ完全には解明されておりません。同じく未解決である銀河の形成について知ることができれば、その後の形の進化も明らかになると期待されています。

また、全ての遠方の銀河が不規則銀河であるわけではありません。79億光年以上遠くに存在する渦巻銀河も発見されています。銀河が遠すぎるとその全体像がぼやけてしまい、本当は渦巻銀河であっても不規則銀河のようにみえてしまうことがあるのです。将来的に観測装置が改良されてシャープな遠方銀河の姿を捉えることができるようになれば、遠方宇宙でもより多くのハッブル系列の銀河が見つかるかもしれませんね。

近傍宇宙(左側)と遠方宇宙(右側)での銀河の比較。遠方銀河であっても、渦巻銀河の腕らしき構造が確認できるものも存在する。Credit: John Peacock
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楽しい”銀河動物園”

銀河は様々な形があり、そして私たちからの距離に応じて一般的な銀河の形も変わることがわかりました。

そして銀河の形の進化を調べることで、銀河そのものの進化過程を辿れそうだ、と考えた天文学者がいました。ちょうどその頃、アメリカで「スローン・ディジタル・スカイ・サーベイ (SDSS)」という大規模な観測計画が遂行されていました。これは、全天の1/4を観測して、その範囲内の銀河の位置を決めて正確な宇宙地図を作ろうとする野心的なプロジェクトでした。

宇宙地図を作る過程でたくさんの銀河を観測しているわけですから、その銀河を形で分類して銀河の形成と進化を明らかにしよう!という試みがスタートしました。それが「Galaxy Zoo(銀河動物園)プロジェクト」です。

それでは、膨大な銀河の形の判別は誰が行うのでしょうか?当時は機械学習や人工知能はまだメジャーではなかったので、機械やコンピュータに頼る事は難しい状況でした。

そこで、Galaxy Zooでは一般市民のボランティアを募集しましたすると集まった人数は10万人以上、そして彼らによって目視で分類された銀河数はなんと7千万天体にも及びました!これぞまさに研究者と市民が互いに協力をして研究を進める「市民天文学」の成功例の一つといったところでしょう。

そしてGalaxy Zooにより、SDSSで観測された各銀河がどのような形をしているのかが判明しました。市民により届けられた銀河の形の情報を活用して、今度は天文学者が銀河の形から銀河進化を探る研究を行いました。一般の天文ファンとプロの天文学者が手を携えて宇宙の謎に挑んだ、画期的な研究ともいえるでしょう。

Galaxy Zooの論文を以下に示します。このプロジェクトが成功したので、その後も継続して市民ボランティアによる銀河の形態分類が行われるようになりました。

Galaxy Zoo : Morphologies derived from visual inspection of galaxies from the Sloan Digital Sky Survey
In order to understand the formation and subsequent evolution of galaxies one must first distinguish between the two main morphological classes of massive syste...
Galaxy Zoo: the dependence of morphology and colour on environment
We analyse the relationships between galaxy morphology, colour, environment and stellar mass using data for over 100,000 objects from Galaxy Zoo, the largest sa...

Galaxy Zooでは、こんな銀河の写真集ともいえる情報も提供しています。

Galaxy Zooで分類された銀河の集合写真。Credit: Galaxy Zoo

銀河動物園の名に恥じない、まさに夢が詰まった集合写真ですね!綺麗な渦巻き模様をしているもの、渦巻銀河を真横から見たまるでシンバルのような銀河、リングをまとったような銀河…。宇宙には、本当に多種多様な銀河が存在しているということが分かりますね!皆さんもぜひお気に入りの子を見つけて可愛がってあげてくださいね(笑)

他にも、銀河をアルファベットに見立てたこんな遊びもしています。絵文字や顔文字ならぬ、まさに「銀河文字」ですねw

Galaxy Zoo9周年を祝う、 “happy birthday Galaxy Zoo”の銀河文字。Credit: Galaxy Zoo
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最後に

いかがでしたか?銀河の形ってたまたまそうなったんじゃないの?と思っていた方も多いと思いますが、実はその形には銀河の進化や形成に関する情報が含まれていたのです。今後は遠方の宇宙でもたくさんの銀河の形を分類することができれば、謎に包まれている銀河進化の歴史を紐解くことができるようになるかもしれません

実は本記事は、以下のプレスリリースの解説記事の一部でした。ところが、銀河の形について解説する部分があまりにも膨大になってしまったので、独立した記事にすることとしました。プレスリリースの解説記事も後日掲載しますので、ぜひご覧になってくださいね!

人工知能を活用したすばる銀河動物園プロジェクト | 観測成果 | すばる望遠鏡
国立天文台を中心とした研究チームは、すばる望遠鏡の超広視野カメラで得た 56 万個もの銀河画像に対して人工知能を用いた形態分類を行ない、特に渦巻銀河の形を 97.5 パーセントという非常に高い精度で自動分類することに成功しました。今後、研究チームは、市民天文学プロジェクトとも協力してより多様な形態分類を進めることを目指...

最後に、本記事の執筆で参照した論文についてご紹介します。

The Morphological Evolution of Galaxies
Many galaxies appear to have taken on their familiar appearance relatively recently. In the distant Universe, galaxy morphology started to deviate significantly...

本日もお読みくださりありがとうございました!また次の記事でお会いしましょう。

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感想(20件)

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コメント

  1. たおぷー より:

    stargazignさん
    美味しそうな銀河たちですね。集めると宝石箱みたいで美しい。
    初卸パソコンで書いていますが大丈夫かな・・
    暫く奮闘しながら拝読させていただきます。

    • stargazer より:

      たおぷーさん、ありがとうございます!

      銀河を「美味しそう」と形容した方は初めて見ましたw
      見間違いかと思い、つい二度見してしまいました(笑)

      PC届いたんですね!おめでとうございます。
      新しいものはいいですよねー初期セットアップ面倒ですけど…。
      ぜひぜひ新しいPCを使いこなしてください!

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