第二の地球を探そう! 〜プラネット・ハンターたちの狩猟法〜

系外惑星
Credit: NAOJ, Subaru Telescope

みなさん、こんにちは!今回は太陽系外惑星の解説シリーズ2本目の記事です。

前回の記事では太陽系外惑星がどのように発見されたかをご紹介しました。まだお読みではない方はぜひご覧になってくださいね!

第二の地球を探そう! 〜太陽系外惑星探査の歴史〜
宇宙には地球のような惑星がたくさんあるって本当!?

今回は、”プラネット・ハンター“とも称される、太陽系外惑星の研究をしている天文学者たちがどのようにして第二の地球を探しているのかをご紹介します。前回の記事ではドップラー法による観測方法をご紹介しましたが、実は太陽系外惑星を探す方法はまだまだたくさんあるんですよ!

それでは、一緒にプラネット・ハンターたちがどうやって太陽系外惑星を狩り出しているのかを見ていきましょう!

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ドップラー法(視線速度法)

これは前回の記事でもご紹介しましたね!ドップラー効果のお話はちゃんと覚えていますか?音や光を発しているものが私たちに近づいてくるときは周波数が高くなり、逆に遠ざかるときは周波数が小さくなるんでしたよね。対応関係を表にまとめてみましょう!

周波数が高くなるとき
(近づいてくるとき)
周波数が小さくなるとき
(遠ざかるとき)
高く聞こえる低く聞こえる
色が青い方に移る色が赤い方に移る
音や光を発する物体が私たちに向かって近づいたり遠ざかったりするときの対応関係のまとめ。

音については大丈夫ですよね!救急車やパトカーのサイレンで日常的に経験しているのでイメージしやすいですね。

光については、これは日常生活では絶対に経験できません(笑)光はドップラー効果でどう変化するかというと、「星が私たちに近づくと色が青い方に移り、逆に遠ざかると色が赤い方に移る」です!

前回お見せした可視光の図を、念の為もう一度お見せしますね。もともと緑色に見えていた星の場合、私たちに近づくと水色や青に、逆に遠ざかると黄色や橙色の方に光が変化します。

可視光の色とエネルギーの対応関係。Credit: stargazer

主星のふらつきについて、ESAが良いビデオをYouTubeに投稿していたのでお見せします。

Star and planet orbiting their common centre of mass

太陽系外惑星の重力はとても小さいので主星をあまり動かすことはできないのですが、このわずかなふらつきから色の変化を検出して太陽系外惑星が存在する確証を得ているのです!

主星に及ぼす重力が強ければ強いほど主星のふらつきが顕著になるので、公転軌道が主星に近くて、かつより重い太陽系外惑星ほどドップラー法で検出しやすくなります。最初に発見された太陽系外惑星のように、主星の極端に近くを木星サイズの巨大惑星が高速回転している「ホット・ジュピター」はドップラー法の最適なターゲットですね!

NASAの統計によると、現在ドップラー法によって890個もの太陽系外惑星が発見されているそうです。想像以上に発見数が多いですね!

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トランジット法

次に紹介する手法は「トランジット法」です。皆さん、トランジットという言葉は聞いたことがありますか?海外旅行をしたことのある方でしたら、最終目的地へ向かう際に経由する空港での飛行機の乗り継ぎでピンとくるのではないでしょうか。そうです、トランジット (transit) とは「通過する」という意味です。

では、太陽系外惑星の探査において何が何を通過するのでしょうか?答えは「太陽系外惑星が主星と私たちの間を通過」することを指しています。

明るさが一定の主星を観測しているとしましょう。何も私たちと主星を遮るものがなければ、主星の明るさは明日も来年も一緒です。ところが、もし主星が太陽系外惑星を持っていて、私たちと主星の間を横切ったらどうなるでしょうか?…そうです、太陽系外惑星が主星の一部を隠してしまい、明るさ一定のはずの主星が暗くなるのです!

トランジット法の概念図。横軸は時間、縦軸は主星の明るさをそれぞれ表す。主星と私たちの間を太陽系外惑星が通過すると、主星がわずかに暗くなる。また、通過する太陽系外惑星が大きいほど主星の隠れる領域が大きくなるため、より暗く観測される。Credit: NASA

上のアニメーションはトランジット法のイメージです。太陽系外惑星が私たちと主星の間を横切ると主星の一部が隠されてしまうため、主星が本来よりも暗く観測されるというのが分かりますね!そして横切る太陽系外惑星が大きければ大きいほど主星の隠れる部分も大きくなるため、観測される明るさもより暗くなってしまいます。

1988年から2014年における、手法別の太陽系外惑星発見数。緑色がトランジット法による発見数であるが、他の手法により件数と比較して圧倒的に多いことがわかる。Wikipediaより引用。

現在、このトランジット法によって大量の太陽系外惑星の候補天体が発見されています。上の図はWikipediaから拝借した手法ごとの太陽系外惑星の発見数なのです。緑色がトランジット法により発見された太陽系外惑星を表しているのですが、圧倒的に他の手法(他の色)よりも多いことがわかりますね!

これは、2018年までNASAが運用していた「ケプラー衛星」による寄与が物凄く大きいです。ケプラー衛星とは、正にトランジット現象による恒星の減光を観測する目的で打ち上げられた観測衛星です。恒星の光が暗くなる瞬間を見逃さないために、何と9年間も宇宙のある一つの領域だけを見続けていたのです!これには、大黒摩季さんもびっくりですね(笑)

あなただけ見つめてる (2019 Remastered)

ケプラー衛星の功績もあり、トランジット法によって現在3191個もの太陽系外惑星が発見されています。繰り返しになりますが、これは他の手法と比較しても圧倒的に大きな発見数を誇っています。宇宙の一点だけを見続けた一途なケプラー衛星は残念ながら退役してしまいましたが、現在は後継機である「トランジット太陽系外惑星探査衛星(通称:TESS)」が引き続きトランジット法により太陽系外惑星を探し続けています。

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直接撮像法

これは非常にわかりやすいですね(笑)太陽系外惑星を直接捉えてやろうという単純明快な手法です。しかしながら、これには大きな困難が伴います。それは、星が明るすぎると太陽系外惑星が主星の光に紛れて見えなくなるからです。

ではどうすればよいでしょうか。こういう時は、逆に難しいことを抜きにして考えちゃえばいいんです!…そうです、明るすぎて観測の邪魔になる主星の光を隠しちゃいましょう

トランジット法による太陽系外惑星の発見はNASAのケプラー衛星が大活躍していましたが、この直接撮像法による探査ではなんと日本が大活躍しています!国立天文台の准教授であった田村元秀氏(現 東京大学理学部天文学科 教授)が率いたSEEDSプロジェクトでは、独自に開発した「HiCIAO(ハイチャオ)」と呼ばれる装置をすばる望遠鏡に搭載し、太陽系外惑星や原始惑星系円盤を直接撮像する研究を推進していました。原始惑星系円盤というのは、若い恒星を取り巻く惑星のもとになる円盤のことです!

太陽系を解剖しよう!
私たちの地球が存在する太陽系。身近な宇宙である太陽系について学んでみましょう。

HiCIAOコロナグラフと呼ばれるカメラで、明るい主星の光を隠してその周りある原始惑星系円盤や太陽系外惑星を直接捉えることを目的として設計されています。それでは、実際にHiCIAOで撮影された画像を見てみましょう!

HiCIAOにより撮影された太陽系外惑星の姿。主星の光を隠すことにより、BとCという太陽系外惑星を観測することが可能となった。Credit: NAOJ, Subaru Telescope
同じくHiCIAOで観測された原始惑星系円盤。太陽系もこのような原始惑星系円盤から誕生したと考えられている。隠された主星と原始惑星系円盤の間に隙間があり、そこに太陽系外惑星が誕生していると考えられている。Credit: NAOJ, Subaru Terescope

上の図はともにすばる望遠鏡に搭載されたHiCIAOで観測された画像です。左側は主星(グリーゼ758)の光を隠すことで、見事に太陽系外惑星を直接撮像することに成功した例です。この図を見ても、太陽系外惑星を直接撮像することがいかに難しいかが良く分かりますね!ちなみに、この図ではCという太陽系外惑星候補も見つかっていますが、後の観測によってCは太陽系外惑星ではなく主星のさらに遠くに存在する別の恒星であることが判明しています。

右側は太陽系外惑星ではなく、原始惑星系円盤を直接観測することに成功した例です。主星の光を隠すことで、それを取り巻くリングが見えていますね!これが惑星のもととなる原始惑星系円盤です。

興味深いことに、原始惑星系円盤と主星の間に何も写っていない隙間ができていますね。実はこの隙間は、ここで太陽系外惑星がすでに形成されたことを示唆しているのです!惑星が出来上がったので、その材料である円盤がここだけなくなったわけです。このようにして太陽系外惑星が誕生している現場を直接捉え、そして私たちの太陽系がどうやって形成されたのかを調べられるというのは非常に面白いですね!

非常に分かりやすく、そして大変興味深い画像を届けてくれる直接撮像法ですが、残念ながら欠点もあります。それは、あまり効率的に太陽系外惑星を発見できないという点です。

トランジット法では、観測領域に存在するほぼ全ての恒星がターゲットとなります。同じ領域をずっと観測して、パラパラ漫画のよう画像をチェックした時に周期的に暗くなる恒星を探し出すのがドランジット法です。

一方で直接撮像法は、一つの恒星にターゲットを絞って観測しなければなりません。一度に何十、何百もの恒星を観測対象とできるトランジット法と比較して、直接撮像法がいかに効率が悪いかが分かりますね。そのため、直接撮像法はすでに他の手法で太陽系外惑星の存在が示唆されている恒星を観測ターゲットとし、太陽系外惑星の存在証拠をより強固にするためにも利用されています。

直接撮像法により存在が確かめられた太陽系外惑星は50個です。残念ながら、今日ご紹介する4つの手法の中では最小の発見数となっています。

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マイクロレンズ法

最後にご紹介する手法は「マイクロレンズ法」と呼ばれるものです。…なんか思い浮かぶ現象がありませんか?そうです、マイクロレンズ法とは重力レンズ効果を利用した探査法なのです!

私がこのブログを開設したとき、まずはどんなトピックについて記事を執筆しようかなと考えました。すると、ダークマターにしろ太陽系外惑星にしろ重力レンズ効果について触れなければならないことに気がつきました(笑)これまでに投稿した記事で重力レンズの登場率が高かったのは、早めに皆さんに重力レンズについて馴染んでもらいたかったからですw

さて、マイクロレンズ現象とはどんな重力レンズ効果なのでしょうか?これまでに皆さんと見てきた重力レンズは重力源が銀河や銀河団と非常に重かったので、重力レンズされる銀河が複数に分離したりリング状になったりしていましたね

重力レンズ天体の美しさを楽しもう!
美しく魅惑的な重力レンズ天体。ぜひその魅力を味わってみませんか?

それに対して、マイクロレンズ法では重力源が天の川銀河内の恒星です。重さとしては、これまで重力源として考えていた銀河の1兆倍以上(!)軽いのです。言ってみれば、これまでの銀河や銀河団による重力レンズは度がドギツい分厚いレンズ今回のマイクロレンズ法は薄っぺらいガラス板によるレンズだと考えてください(笑)マイクロレンズ現象では、重力レンズされる恒星の形を歪ませるほどの力はないのです。

でも、重力レンズされることによって恒星が一瞬だけ明るくなるのです!ちょっと前置きが長くなりましたが、まずはマイクロレンズ法の概念図を見てみましょう。

マイクロレンズ法の概念図。左側において、黄色い星が重力レンズされる恒星、赤い星が重力源となる恒星を表している。私たちと黄色い星の間を重力源となる赤い星が横切るとマイクロレンズ現象が起こり、黄色い星が瞬間的に明るくなる。通常であれば左側の1と書かれた図のように横切った瞬間に明るくなり、そして再び暗くなるだけである。しかし重力源の赤い星が太陽系外惑星を持っている場合、左側の2のように太陽系外惑星も重力源となることで小さな増光も観測されるのである。Credit: NASA

上の図で、まずは左側に注目しましょう。黄色い星が重力レンズされる恒星を、赤い星が重力源となる星をそれぞれ表しています。左側にある1番を見てみましょう。私たちと黄色い星の間を赤い星が横切ると、赤い星が重力源となり黄色い星が重力レンズ効果を受けます。真ん中にあるグラフが黄色い星の明るさの時間変化です。赤い星が通過すると黄色い星が明るくなり、その後再び元の明るさに戻る様子が分かりますね

それでは、重力源の赤い星が太陽系外惑星を持っている場合を考えてみましょう。今度はその隣の2番の図です。赤い星による重力レンズで黄色い星が明るくなるまでは同じです。ところが、私たちと黄色い星の間を赤い星の惑星が横切る瞬間に、今度は赤い星の惑星が重力源となる小さな重力レンズ効果が現れるのです!黄色い星の明るさを表すグラフでも、赤い星による大きな増光に加えて小さなピークも見えますね。これが赤い星の惑星が重力源となったマイクロレンズ効果による増光です。

図の右側は明るさ変化のグラフに注目したものです。赤い星までの距離や黄色い星の移動速度によって変わるのですが、赤い星による大きな増光は1, 2ヶ月程度続くようです。一方で、赤い星の惑星による小さな増光はたったの数時間しか見られません。太陽系外惑星による増光は小さいのにその継続時間も短いとなると、かなり観測の難易度は高いですね!

マイクロレンズ法による太陽系外惑星探査にもいくつか欠点があります。まず、いつ何時、どの恒星がマイクロレンズ現象で明るくなるのか分からないということです。しかも、上の図で言うところの赤い星が太陽系外惑星を持っていないと意味がありません!ただ黄色い星の前を赤い星が通過したと言う事実が判明するだけです(笑)マイクロレンズ法により太陽系外惑星を探すには、粘り強い根気が要求されそうですね!私には絶対に向いていない研究です(笑)

もう一つの欠点は、たまたま赤い星が横切ることで引き起こされる現象なので再現性がない点です。観測のチャンスはたったの一度きりです!このチャンスを逃してしまうと、赤い星にある太陽系外惑星はもう二度と私たちの目の前に現れることはない可能性が極めて高いのです。

余談ですが、赤い星の太陽系外惑星がさらに月のような衛星を持っている場合、3つ目のさらに小さな増光が観測されると聞いたことがあります。かなりの観測精度が要求されそうですのでなかなか難しいとは思いますが、第二の地球どころか第二の月だなんてとても魅力的でロマンがありますよね

現在、マイクロレンズ法によって発見された太陽系外惑星の数は96個だそうです。日本でも大阪大学や名古屋大学のグループがマイクロレンズ法による太陽系外惑星探査を精力的に行っています!

このセクションは、以下の論文を一部参照しました。

Microlensing Searches for Exoplanets
Gravitational microlensing finds planets through their gravitational influence on the light coming from a more distant background star. The presence of the plan...
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最後に

いかがでしたか?直接撮像法以外は直感的に分かりづらかったかもしれませんが、様々な知恵と工夫を凝らして太陽系外惑星を探しているプラネット・ハンター達の頑張りを知っていただければ嬉しいです。今後は大型宇宙望遠鏡や30メートル級の超大型地上望遠鏡の登場により暗い光も捕らえられるようになるため、直接撮像法による発見数も伸びていくかもしれませんね

現在は太陽系外惑星がどのような大気を持っているのか、気温はどのくらいか、地球のように水が存在するのかを調べることも可能となっています。実際、最新の研究で地球のような環境を持つ太陽系外惑星も見つかり始めています。

地球サイズの系外惑星発見 液体の水も存在可能―NASA:時事ドットコム
米航空宇宙局(NASA)は16日までに、地球とほぼ同じサイズで、岩石でできた太陽系外惑星を発見したと発表した。温度は水が液体の状態で存在できると推定され、これまで見つかった系外惑星の中で、大きさと温度の双方で最も地球に近い条件だという。

第二の地球を見つけたとしても、残念ながら私たちがそこへ赴くことは現在の科学ではほぼ不可能です。しかし、そこでどんな生命体が存在しているのか、そしてどんな文明を育んでいるのかを想像するだけでも夢がありますよね。

いつの時代も、私たちは「広い宇宙でひとりぼっちなのか?」と自ら問いかけ続けてきました。第二の地球が見つかり、そしてそこで生命体が存在する兆候が見つかることで、私たちが永遠の孤独から解放される時が来ることを強く願っています。

本記事では、以下のNASAのホームページを参照しています。

Exoplanet Exploration: Planets Beyond our Solar System
NASA’s Exoplanet Exploration Program, the search for planets and life beyond our solar system.

本日もお読みくださりありがとうございました。また次の記事でお会いしましょう!

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