重力レンズ天体の美しさを楽しもう!

宇宙論
Credit: NASA, ESA

皆さん、こんにちは!今日の記事は重力レンズ解説シリーズの四本目の記事です。

ここまでは色々と難しい話もあり、大変でしたね!今日は美しい重力レンズ天体の鑑賞会といきましょう。美術館や写真展覧会にきた気持ちで、肩の力を抜いて楽しんでくださいね!

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重力レンズのおさらい

簡単に図を用いて重力レンズのおさらいをしておきましょう!

重力レンズ現象の概念図。観測者、重力源となる天体(レンズ天体)、光源となる天体(重力レンズ天体)が一直線上に並ぶことで、光源が重力レンズされる。観測される重力レンズ天体は複数に像が分離したり、天体の明るさが増光されてみえる。 Credit: ALMA (ESO/NRAO/NAOJ), L. Calçada (ESO), Y. Hezaveh et al.(一部改定)

図のように観測者重力源となる天体(レンズ天体と言います)光源となる天体(重力レンズされる天体なので、重力レンズ天体と言います)が一直線上に並ぶと重力レンズ現象が起こります。

光源の天体が重力レンズされると、もともと1つの天体であったのにあたかも複数の天体であるかのように分離して見えたり、形がひしゃげて見えたり、天体が増光されて明るく見えたりします。一方でレンズ天体は重力源にすぎないので、特に変化はしません。

図の右端にある、実際に重力レンズ天体が観測される様子を見てみましょう。赤い光源の天体が3つの像に分離して見えますね。しかも、重力レンズされたことでやや明るくなっています。一方でレンズ天体は増光もされず、そのままぼんやりと写っていますね。

前置きはこれくらいにして、いよいよ魅惑の重力レンズ天体の世界へと足を踏み入れてみましょう!

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重力レンズクエーサー像

アインシュタイン・リング

では、最初のお写真をみてみましょう。

アインシュタイン・リング。Credit: NASAESA, A. Bolton (Harvard-Smithsonian CfA) and the SLACS Team

まるで目玉のようですね!これはレンズ銀河(中央の黄色い天体)が球形なので光源からの光がどの角度にも満遍なく曲がり、綺麗なリング状に見えています。このような重力レンズ天体を「アインシュタイン・リング」と呼んでいます。

ハッブル宇宙望遠鏡で撮影されたアインシュタイン・リングの詰め合わせをお見せしますね。

多数のアインシュタイン・リング像。Credt: NASA, ESA, STScI

綺麗なリングが見えるもの、リングの一部が途切れてしまっているもの、またレンズ銀河が明るすぎてリングがぼやけてしまっているものもありますね。

次に、不思議なアインシュタイン・リング像をお見せします。

二重アインシュタイン・リング。内側に鮮明なリングが、そしてその外側に薄いリングが見える。Credit: NASAESA, R. Gavazzi and T. Treu (University of California, Santa Barbara), and the SLACS team

なんと、世にも珍しい二重になっているアインシュタイン・リングです!これは光源が2つあり、観測者、レンズ銀河、光源1、光源2が一直線となった時に起こる極めて稀な現象です。二重アインシュタイン・リングは2020年現在、この天体しか発見されていないはずです。

最後に、面白い発見のされ方をしたアインシュタイン・リングをご紹介します。

“ホルスの目”と呼ばれるアインシュタイン・リング。Credit: 国立天文台

これは”ホルスの目”と名付けられたアインシュタイン・リングです。

この天体は、国立天文台が大学生向けに開催した「2015年すばる中秋の名月の学校」の模擬演習の際に偶然発見されました。参加した大学生がすばる望遠鏡に搭載された”Hyper Suprime-Cam”と呼ばれる巨大なカメラの画像をみている際に、たまたまこの不思議な天体を見つけたのです。指導をしていた国立天文台のスタッフが確認したところ、それが未発見の重力レンズ天体であることが判明しました。

その後この天体は論文として発表されたのですが、その著者にはこの天体を発見した大学生や模擬演習のお手伝いをしていた大学院生も含まれています。偶然発見した天体が論文になるような大発見で、しかも大学生も論文に携われるなんて夢のある話ですよね!

以下がホルスの目についての論文です。

A Spectroscopically Confirmed Double Source Plane Lens System in the Hyper Suprime-Cam Subaru Strategic Program
We report the serendipitous discovery of HSC J142449-005322, a double source plane lens system in the Hyper Suprime-Cam Subaru Strategic Program. We dub the sys...

四重像重力レンズ天体(アインシュタイン・クロス)

今度はリング状にではなく、光源が複数の像に分離している摩訶不思議な「四重像重力レンズ天体」をご紹介します!

光源が4つに分離して見える、通称「アインシュタイン・クロス」。Credit: NASA, ESA

この天体は十字架のように見えるので、「アインシュタイン・クロス」と呼ばれています。…えっ、四重像のはずなのに、なんで天体が5つ写っているのか、ですか?思い出してください、重力源となるレンズ天体も一緒に観測されることがあるんです。今回は中心のレンズ銀河と周囲の重力レンズ天体が同じような大きさと明るさなので、あたかも全て同じ天体であるかのように見えてしまいますね。

次は、「クローバー・リーフ」という愛称で知られる四重像重力レンズ天体です。

クローバー・リーフと呼ばれる重力レンズ天体。左は観測により得られたデータ、中央は重力レンズ天体の光をモデル化した図、右は左の観測データから中央のモデルを差し引いた図である。McLead et al. (2009, ApJ, 699, 1578)より引用。

今回はレンズ銀河は写っていませんね。すごく綺麗な配置なので、私は結構好きです(笑)

上の図は中間赤外線でクローバー・リーフを観測した論文から引用したものです。3つのパネルから構成されていますが、左は実際に観測されたデータです。かなりノイズが乗っていて、せっかくのクローバー・リーフがぼやけちゃっていますね。中央は重力レンズ像の光をモデル化したもので、右は左の観測データから中央のモデル化した天体を差し引いたものです。差引後の画像を見るとノイズが全体的に一様となっているので、重力レンズ像の部分だけをうまく差し引けた、つまり重力レンズ像のモデル化に成功していることがわかります。

この画像は以下の論文から引用したものです。

Detection of a Companion Lens Galaxy using the Mid-infrared Flux Ratios of the Gravitationally Lensed Quasar H1413+117
We present the first resolved mid-IR (11 micron) observations of the four-image quasar lens H1413+117 using the Michelle camera on Gemini North. All previous ob...
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銀河団による重力レンズ

これまでは銀河の重力により歪められた重力レンズ天体を見てきました。それでは、銀河よりも重い銀河団がレンズ天体となるとどう見えるでしょうか

銀河団による重力レンズ現象。多くの銀河がアーチ状に引き伸ばされていることがわかる。 Credit: NASA, STScI

これはAbel 2218という銀河団を撮影したものです。特に左半分を見ると顕著なのですが、多くの銀河がアーチ状に引き伸ばされていることがわかるでしょうか。これは、銀河団の重力によって背後の銀河が歪められているのです!そしてアーチの中心は銀河団の中心(おおよそ左側中央にある明るい銀河の場所)となっています。

最後に、もう一つ面白い銀河団による重力レンズ天体(?)をご紹介します。

銀河団の重力レンズ現象により、スマイルマークに見える天体。目と鼻はおそらく銀河団に存在する銀河、口が銀河団により歪められたさらに遠くにある銀河。 Credit: NASA, ESA

まさか宇宙に可愛いスマイルマークが浮かんでいるとは!これも重力レンズのなせる業ですね(笑)

二つのオレンジ色の目と鼻は、おそらく銀河団に属する銀河です。そしてこの銀河団を重力源として、背後にある銀河が歪められているのです。今回も鼻のあたりを中心とした、アーチ状に引き伸ばされた銀河がいくつも見えますね!

そしてそのアーチの一つが、なんと奇跡的に口の位置にきたのです!驚くべき偶然がいくつも重なり、私たちは広い宇宙に浮かんでいるスマイルマークを楽しむことができているのです(笑)

個人的には、左側中央に綺麗な渦巻銀河が写っているのも気になりますwこんな綺麗な天体が空間にプカプカ浮いていると想像すると、宇宙って本当に不思議で魅力的ですね!

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最後に

いかがでしたか?綺麗で不思議で魅惑的な重力レンズ天体の鑑賞会、楽しんでいただけましたか?

重力によって光が曲がり、それによって天体の像がリング状になったり分離したり、壮大なスマイルマークをつくったり。宇宙にはいくつもの魅力が詰まっていて楽しいですね!

今日もお読みくださりありがとうございました!また次の記事でお会いしましょう。

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コメント

  1. たおぷー より:

    stargazingさん♪
    何かに自分の名前が付くって凄いですね!それが嬉しいのは何故でしょうか?
    stargazingリングも見たいです😁
    重力レンズも薄ーく分かってきました。(理解力が乏しいので…)
    常に研究、解明して私達に教えてくれる方達に感謝です✨

    人間ベースで考えると、空気や水など無いと生物は生きられないと思っちゃいますが、それらが無い方が生きやすい生命体もいるのかも知れないと思うと…形が想像できません(笑)
    自分でも言っていることが分かりません😅

    • stargazer より:

      たおぷーさん、ありがとうございます!
      やっぱり理論や現象に自分の名前がつくというのは、その分野の歴史に名を刻んだも同然なので感慨深いでしょうね。
      たおぷーさんも何らかの分野でお名前を残せたらすごいですよね(笑)

      重力レンズは元々宇宙の本を読んで知識がある方でないと中々難しいですよねー。。。
      完全な理解はできなくても、記事を読んだら何か一つは新たな学びがあるように、というのは心がけてます!
      あと、今回や満月の名前みたいな難しいこと抜きの記事も増やしていきたいですね。

      > 人間ベースで考えると、空気や水など無いと生物は生きられないと思っちゃいますが、それらが無い方が生きやすい生命体もいるのかも知れないと思うと…形が想像できません(笑)
      これは私も本当にそう思います!そうなんです、宇宙にはどんな生命体がいるのかなんて想像もつきませんし、考えるとすごく面白いですよね。
      宇宙にはまだまだ私たちの知らない世界や生命体、そして美しい文明があるのかも!と想像すると本当にワクワクしますね!

      あと、この記事で無事10記事目を迎えたので、google adsenseに応募してみました。
      すると2日で審査が終わり、無事一発合格となりました!これもいつも読んでコメントをくださるたおぷーさんのおかげです、本当にありがとうございます!

  2. たおぷー より:

    stargazingさん♪
    …stargazingさんて本当に優しいですよね……✨しみじみ😢

    …あっ!google adsense一発合格おめでとうございます!!
    stargazingさんの記事が素敵でみんな見に来てくれたからですね♬
    ポチポチすれば少しはstargazingさんに恩返しが出来るのかな😊

    stargazingさんの記事は一つどころでは無く必ず幾つも学びが有ります♪
    まだ見ぬ世界を想いワクワク最高ですね!

    違う意味で歴史に名を残さないようにします(笑)

    あれ…また返信からじゃないかも…💧

    • たおぷー より:

      このコメントは管理者だけが見ることができます

      • stargazer より:

        ありがとうございます!
        ポチポチくらいでしたらgoogleさんの検閲に引っかかることはないと思うので大丈夫ですよ(笑)
        とはいえ、たおぷーさんは広告のクリックなんて気にせず、純粋に記事を読んでいただけるだけで私は嬉しいです。

        レイアウトチェックのためスマホで確認したら、突然全画面の広告が出てきて驚きましたw
        あまり読んでくださる方が不便に感じない程度にしないと。。。

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