第二の地球を探そう! 〜太陽系外惑星探査の歴史〜

系外惑星
Credit: NASA

私たちの地球は豊富な水と豊かな自然のおかげで、数多の生命が居住できています。ところが、太陽系内の他の惑星に目を向けてみても、地球のような生命が生存可能な星というのは存在しません。

果たして、私たちの地球はこの広い宇宙の中で生命が誕生できる唯一の「奇跡の惑星」なのでしょうか?今日は天文学者たちが第二の地球を探すべく奮闘した歴史についてみていきましょう!

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人類が”第二の地球”について思いを馳せる

人類はこの宇宙に存在する生命体は私たちだけなのかと、古くから自問し続けてきました。その過程で、地球のような惑星は他にも存在するのか?という疑問も生じました。地球のような恵みの惑星が他にもあれば、きっとそこでは人類のような生命体が暮らしているはずだ!というごく自然な考えです。

私たちの暮らす地球。宇宙には地球のような生命の惑星が他にもあるのだろうか? (Credit: NASA)

数多くのSF作品では異星人が登場しますが、残念ながら彼らの住処を望遠鏡で直接発見することは極めて困難でした。なぜならば、惑星は自ら光を発しない上に恒星よりもずっと小さいからです。

惑星とは、太陽のような「恒星」と呼ばれる自ら輝く星の周囲を公転している天体です。太陽と地球を例にとって考えてみましょう。あなたは宇宙のどこか遠くから太陽を観測しているとします。どうでしょうか?太陽ですら小さく見える宇宙の遠い場所から、大きさが太陽の100分の1以下である地球を見つけることができるでしょうか

もし仮に地球が太陽のように明るく輝いている天体であれば、運が良ければ小さな光の粒として地球を認識できるかもしれません。ですが現実はなんとも非情です。地球は自ら光り輝くことができないのです。加えて、地球の傍ではこれでもかと明るく輝く巨大な太陽が存在するのです。こんな状況では、直接望遠鏡を覗き込んで太陽の近くにある地球を発見するなんて絶望的ですよね。。。
(注意:太陽を肉眼、または望遠鏡で直接観測することは絶対にしないでください!!)

では、第二の地球の発見は絶望的なのでしょうか?・・・いえいえ、直接惑星を観測することができないのであれば、間接的な証拠を見つければいいのです!

それでは、どのようにして太陽系以外の惑星(太陽系外惑星と呼びます)を見つければ良いのでしょうか。その驚くべき観測方法について見ていきましょう!

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ドップラー法(視線速度法)について

ドップラー効果ってなんだろう

太陽系外惑星の観測方法である「ドップラー法」の説明をしたいのですが、まず「ドップラー」自体の説明が必要ですよね(笑)

でも皆さん、ドップラー効果ってなんとなぁーく聞いた覚えがありませんか?そうです、救急車が通り過ぎる際にサイレンの音程が変化する効果のことです!

救急車が停車している場合(左)と自分へ向かってきている場合(右)の音の聞こえ方の違い。Copyright: Stargazing blog

上の図で考えてみましょう。左側の男性は止まっている救急車のサイレンを聞いています。救急車は停止しているので、そこから発せられる音は救急車を中心とした同心円状に広がってゆきます。ですので、男性の耳に届くサイレンの音波はずっと一定ですので、音程も一定となります。

では右側の女性はどうでしょうか?救急車が女性の方へと近づいてきています。音は常に発生元から円状に発せられます。ですので、救急車が動く方向へ音の波は濃くなってゆくのです。

オシロスコープってこんな機械です。見たことはありますよね?

皆さんは理科の授業などでオシロスコープを使ったことはありますか?音を入力すると、その音を波として出力してくれる装置です。あれって低い声を入力すると波が間延びして、逆に高い声を入れると波が激しく振動しますよね?周波数というのは波が1秒間あたり何回振動するかを表しているので、

周波数が高い = 波が激しく振動している = 音程が高い

ということなんです!
今回の例だと、女性が聞いている音波は密度が濃くなった分だけ男性の聞いている音波よりも激しく振動しています。ですので、近づいてくる救急車の音は高く聞こえるのです!

このように、本来は一定の周波数で音を出しているものが動くと、その動きによって音波の周波数が変わって本来の音程と違ったように聞こえることがあります。これを「ドップラー効果」と呼ぶのです!

光のドップラー効果

さて、先ほどは音波でドップラー効果を説明しました。では、光ではどうでしょうか?光も音と同様に波としての性質を持っているので、実は光の場合もドップラー効果が生じるのです!

例えば、ある星が地球に向かって高速で向かってきているとしましょう。光も波なのでドップラー効果が生じます。音の場合は周波数が高くなって音程が上がって聞こえました。さて、光の場合はどのようなことが起きるでしょうか?

光の場合も、ドップラー効果によって周波数が高くなります。そして皆さんは光はエネルギーに応じて名前が変わるという話を覚えているでしょうか?忘れちゃった方は以下の記事をもう一度チェックしてくださいね!

ダークマター研究の歴史2(弾丸銀河団に潜むダークマターの証拠)
X線観測によって暴き出す、銀河団中に存在するダークマターの証拠。

私たちの目に見える光が可視光で、それよりもエネルギーが高ければ紫外線、低ければ赤外線という名前の光になるんでしたね。そして、可視光の中でもエネルギーの違いがあります。そう、光の色の違いです!

可視光の色とエネルギーの関係。紫や青の光はエネルギーが高く、橙や赤の光はエネルギーが弱い。紫や赤の光野崎はそれぞれ紫外線、赤外線となる。Copyright: Stargazing blog

上の図のように、可視光のうち紫や青の光はエネルギーが強く、逆に赤や橙の光はエネルギーが低いのです。光は周波数が大きいほどエネルギーが大きくなります。そのため、光がドップラー効果の影響を受けると光の色が変わるのです!

もし本来は黄色に見える星が高速で地球に向かってきている場合、星の光がドップラー効果を受けてエネルギーが高くなり、光はやや緑色に、一方でその星が高速で地球から遠ざかっている場合はエネルギーが低くなり、星の色は橙に近づきます

このように、光の場合はドップラー効果を受けると光の色が変わって見えるのです!

太陽系外惑星を見つける武器、ドップラー法とは?

簡単のため、まずは太陽と地球で考えることにしましょう!地球は太陽の周りを公転していますね。これは、地球が太陽の重力に引っ張られているからです。

地球は太陽の重力を受けてその周りを公転している。一方で、太陽も地球の重力の影響をわずかながら受けている。

でも、地球にだって重さはありますよね。それならば太陽は地球の重力の影響を受けないのでしょうか?

そうです、受けないはずはありませんね。太陽も地球からの重力の影響を確かに受けているのです!

でも、地球には太陽を公転させるほどの重さはありません。ですので、地球には太陽を少しフラフラとさせることしかできないのです。

ここで太陽系から離れて、太陽系外惑星について考えましょう。太陽系外惑星において、太陽のように中心に存在する恒星を「主星」と呼びます。

主星と太陽系外惑星の関係も太陽と地球の関係と同じです。太陽系外惑星は主星の重力により主星の周りを公転し、一方で主星も太陽系外惑星の重力によってわずかにフラフラと動きます。

これを地球から観測するとどうなるでしょうか。ちょっとアニメーションを見てみましょう。

左側は太陽系外惑星(地球)の重力により、主星(太陽)がフラフラ動いている様子を真上から俯瞰してみた図。主星のふらつきはかなりオーバーに書かれている。右側は地球から観測した、主星の地球に対する速度。地球から遠ざかるとき(グラフのプラスの速度のとき)は光が赤く、近づくとき(グラフのマイナスの速度のとき)は逆に青くなる。(Credit: Alysa Obertas)

上図の左側は、太陽系外惑星(地球、青色の丸)の重力によって、主星(太陽、大きめの黄色い丸)がフラフラ動いている様子を真上から見た図です。太陽系外惑星が公転しているのはもちろんのこと、主星も太陽系外惑星の影響を受けて動いていることがわかりますね!

さて、この動きを地球から観測してみましょう!私たちはこの太陽系外惑星と主星を真横から見ているとします。するとどうでしょうか?主星が私たちから離れる動きをするとき、そして近づく動きをするときに主星からの光がドップラー効果を受けるのです!

太陽系外惑星がなければ、主星はふらつきません。ですので、まずは地球から太陽のような恒星をしばらく観測してみましょう。もし主星の光が周期的に青くなったり赤くなったりしていたら、それはその主星の周りを太陽系外惑星が回っている証拠です。

このように主星が太陽系外惑星の重力によってふらつき、ドップラー効果による主星からの光の周期的な変化を捉えて太陽系外惑星を探す方法を「ドップラー法」と呼びます。主星が私たちから見て近づいたり遠ざかったりすることから、「視線速度法」とも呼ばれています。

直接観測することが困難な太陽系外惑星にとって、このドップラー法という間接的な検出方法は極めて強力な武器なのです!

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太陽系外惑星発見の歩み

新発見はいつも予想外の形で起こる

さて、人類は太陽系外惑星を探すための手法であるドップラー法を手に入れました。世界中の天文学者はこぞって様々な恒星を観測して、我こそが世界で初めて第二の地球を発見するんだ!と果敢に挑戦をしました。

しかし、いつまで経っても第二の地球は姿を現しませんでした。天文学者たちは地球の公転軌道と質量を仮定して、観測する主星がふらつくならばこのくらいだろうと見積もってデータと比較していました。ですが、どんなに新しい観測データを調べてもノイズのような主星の色の変化はあるものの、天文学者が予測した大きさの周期的な色の変化は見られませんでした。

いくら高精度な観測を行なっても地球のような惑星の兆候が見つからなかったため、1990年代初頭には第二の地球なんて存在しないのではないか?という雰囲気も漂ったという話を聞いたことがあります。

ところが、観測データのノイズのようなふらつきに注目する研究者が現れました。スイス・ジュネーブ大学の准教授であったミシェル・マイヨール博士(現ジュネーブ大学 名誉教授)です。

ミシェル・マイヨール (1944 – )、Credit: University of Geneva

マイヨールと彼が指導している大学院生であったディディエ・ケロー(現 英国・ケンブリッジ大学 キャヴェンディッシュ研究所 教授)は、オート=プロヴァンス天文台の約2mの望遠鏡を用いて、太陽のような恒星をたくさん観測しました。そして彼らはこれまで仮定していた地球の公転軌道や質量を一旦忘れ、観測データの中に太陽系外惑星の兆候がないかを調べたのです。

すると、ペガスス座51番星という恒星の観測データの中に太陽系外惑星の証拠を見つけたのです!その証拠は、なんとこれまではノイズだと思われて無視されていた主星の色の変化だったのです。なぜこれまでそんな世紀の大発見をみすみす見逃していたのでしょうか?

太陽系ではあり得ない惑星が、宇宙全体ではスタンダード?

その答えは、ペガスス座51番星がどんな惑星に影響を受けてドップラー効果が生じていたかにあります。驚くなかれ、マイヨールが世界で初めて発見した太陽系外惑星は、なんと太陽と水星の6分の1の距離を、木星の半分程度の質量を持つ巨大惑星が公転していたのです。さらに、公転周期、つまり主星を一周公転するのに要する時間は、たったの4.2日でした。つまり、主星の極めて近くを巨大惑星が超高速で公転していたのです!

この結果は非常に衝撃的でした。もちろん太陽系外惑星の発見も驚くべきことですが、天文学者はそろって太陽系外惑星がもし存在するのであれば、きっと太陽系と同じような環境であろうと推測していたのです。

ですが実際に観測された太陽系外惑星は、太陽系の環境とは似ても似つかないものでした。太陽系は太陽に近いところには水星、金星、地球、火星といった小さな岩石惑星が公転しており、かなり離れたところに木星や土星といった巨大ガス惑星が回っています。ところがペガスス座51番星では、太陽系の水星よりもはるかに近い軌道を木星くらい重い巨大惑星がたった数日といった短期間で公転していたのです。

ホット・ジュピターのイメージCG。太陽の極めて近くを、木星のような巨大惑星がたった数日という短い時間で公転している。これは太陽系の常識では信じられないことである。(Credit: Sci-News.com)

このように、太陽に極めて近い軌道を公転している木星のような巨大惑星を「ホット・ジュピター」と呼びます。その後、他の研究グループもマイヨールに倣って従来の固定観念を取り払ってデータ解析をしたところ、続々とホット・ジュピターが見つかったのです。つまり、ホット・ジュピターは特殊なレアケースというわけではなく、普遍的に見られるありふれた太陽系外惑星だったのです。それと同時に、太陽系を前提とした従来の惑星形成論も大幅な修正を余儀なくされました

ホット・ジュピターはたくさん見つかったのですが、このような惑星が宇宙のスタンダードかというとそうではありません。なぜならば、ホット・ジュピターのように重くて近くを回っている惑星の方が主星への重力を及ぼしやすいため、ドップラー法により見つけやすいという偏りがあるからです。

ただ、様々な太陽系ではあり得ない太陽系外惑星が続々と発見されているのもまた事実です。現在の天文学者はドップラー法以外にも様々な手法を用いて数多くの種類の太陽系外惑星を観測し、普遍的な惑星形成理論を構築することを目指しています

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最後に

いかがだったでしょうか。ドップラー効果についての解説から始まったので理解すべき内容も多く、なかなか本題の太陽系外惑星まで行かなかったので息切れしてしまった方もいるかもしれませんね。。。

そして気が付いたでしょうか?実は今回の記事ではまだ”第二の地球”は見つかっていないのです!もちろんあなたが太陽のすぐ近くをとてつもない猛スピードで回る木星に住めるのなら話は別ですが(笑)遠い将来に地球がもうダメだ!となった時に私たちが移住できそうな候補惑星は、次回以降の記事でご紹介いたします。

最後に、マイヨールによる史上初の太陽系外惑星の発見を報告した論文をご紹介します。マイヨールとケローはこの世紀の大発見により、2019年にノーベル物理学賞を受賞しました!遅ればせながらおめでとうございます!!

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The presence of a Jupiter-mass companion to the star 51 Pegasi is inferred from observations of periodic variations in the star's radial velocity. The companion...

今回もお読みくださりありがとうございました!また次の記事でお会いしましょう。

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