ダークマター研究の歴史1(ダークマターの発見)

ダークマター

ダークマターとは日本語で「暗黒物質」とも呼ばれている、宇宙に存在する目には見えない正体不明の物質です

この記事では、人類がどのようにしてダークマターと出会い、そして目には見えない物質の研究をどうやって進めてきたのかをご紹介します。

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ダークマターの発見

ダークマターは目で見ることはできません。それではどのようにして私たちがその存在を知ることができたのでしょうか。

ツビッキーによるかみのけ座銀河団の観測

議論の始まりはスイス出身の天文学者、フリッツ・ツビッキーによる観測です。

Fritz Zwicky (1898 – 1974) (Credit: Caltech Archives)

ちょっと菅義偉官房長官に似ていますね(笑)

彼はかみのけ座銀河団に属する銀河を観測しました。そして以下の3種類の方法でかみのけ座銀河団の質量を求めました。

  • 古典力学のビリアル定理
  • 銀河団に属する銀河の光の量
  • 銀河団に属する銀河の運動

最初のビリアル定理を用いた質量推定はあまり気にしなくて大丈夫です。

2番目の方法は、銀河団に属する銀河の光の総量から銀河団全体の質量を推定する方法です。もし銀河団が目に見える銀河だけの集まりだとしたら、個々の銀河の光を足し合わせれば確かに銀河団全体の重さを求められるので納得です。

そして最後の方法は、銀河団に属する銀河の運動から統計的に銀河団の重さを求める方法です。これはちょっと難しいのですが、銀河団全体が重ければ属する銀河も中心に強く引っ張られるため運動が激しくなり、逆に銀河団が軽ければ銀河の運動も緩やかになるというのは直感的にわかるかと思います。

かみのけ座銀河団の質量

かみのけ座銀河団 (Credit: Russ Carroll, Robert Gendler, and Bob Frank)

ツビッキーはこれらの方法でかみのけ座銀河団の質量を測定しました。すると、なんと光の量から見積もった銀河団の質量は銀河の運動から見積もった銀河団の質量よりもはるかに小さかったのです。つまり観測結果に誤りがなければ、銀河団の目に見える物質は全体の重さのごく一部に過ぎないというのです。

ツビッキーはこの目に見えない質量をmissing mass(欠損質量)と呼び、光では見ることのできない物質の存在を初めて指摘したのです。

この研究結果をまとめたのが以下の論文です。

ツビッキーの発見後

こうしてダークマターは初めて人類の前に現れたわけですが、ここからトントン拍子にその正体の解明が進んだわけではありません。というのも、他の手段で観測によって検証することが当時は難しかったのです

加えて、ツビッキーは極度の変わり者ということでも有名でした。

Credit: Swiss Physical Society

一体どんなシチュエーションかは分かりませんが、なかなか強烈な写真ですよね(笑)Wikipediaによると同僚の研究者を様々な言い回しで罵倒することが大好きだったようで、一番のお気に入りは「球形のろくでなし」という謎の罵りだったそうです。。。

必ずしも彼の人柄が影響したわけではないとは思いますが、しかしツビッキーにより提唱されたダークマターの研究は30年くらいあまり進展がありませんでした。やはり奇人による突飛なアイディアとも取られかねない、かなり奇抜な発想だったということでしょう。

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観測によりダークマターの証拠が集まり始める

アンドロメダ銀河の回転曲線の観測

ツビッキーによるmissing massの発見から30年くらい経過し、観測装置も当時よりかなり発達しました。そしてダークマターの存在を強く後押ししたのは、私たちもよく知っているアンドロメダ銀河です

アンドロメダ銀河 (Credit; NASA)

アンドロメダ銀河というのは私たちの住む銀河である天の川銀河のお隣に存在する渦巻銀河です。将来は天の川銀河と衝突・合体をすると考えられていますが、その話題はまた今度別の記事でご紹介します。

Vera Rubin (1926 – 2016) (Credit: Carnegie Institution for Science)

アメリカの天文学者、ベラ・ルービンはアンドロメダ銀河の腕に存在するHII(エイチ・ツー)領域と呼ばれている、電離した水素ガスが存在する領域の分光観測をしました。そしてHII領域の回転速度をアンドロメダ銀河中心からの距離の関数として調べました。

回転速度というのは、読んで字のごとく銀河をどれくらいの速さで回っているかということです。渦巻銀河の腕(渦巻きの部分)の至る所で星の形成現場であるHII領域の回転速度を測定し、その回転運動からアンドロメダ銀河全体の質量を求めようとしたのです。

ところが、この観測で驚くべき事実が判明しました。なんと銀河中心から遠ざかってもHII領域の回転速度は遅くならず、ほぼ一定の速度を保っていたのです。

ケプラー運動からのズレがダークマター存在の証拠

アンドロメダ銀河の回転曲線の観測結果。銀河中心から離れるほど遅くなっていくという予想とは裏腹に、距離関係なくほぼ一定の回転速度を持つことがルービンらの観測により判明した。(Credit: Queens University)

例えば、太陽を中心に回っている太陽系の惑星たち(地球、火星、木星など)はケプラーの法則に従って運動しています。ケプラーの法則では中心から遠い天体ほどゆっくり回るとされており、上の図の赤い線のような回転曲線となると予想されます。回転軌道を持つアンドロメダ銀河のHII領域がケプラー運動をせずに上の図の白い線のように一定の回転曲線を描いたということは、私たちの知らない何かしらの法則、または物質が存在することを意味していました

そして他の銀河でもこの回転曲線が詳しく調べられ、どうやら銀河は目に見える領域の外側に広がって重さを持っているらしいということを突き止めました。ここでようやく、目には見えないけど重さを持った物質という、ツビッキーのmissing massが陽の光を浴びるようになったのです。

ルービンによるアンドロメダ銀河の回転曲線を報告した論文は以下のものです。

軽く読んでみて面白かったのが、ルービンは観測されたアンドロメダ銀河の回転曲線とケプラー運動とのズレをこの論文では議論していなかった点です。この論文中で回転曲線が遠くでも一定となっているという記述は見つけられませんでしたし、目に見えない物質が銀河を覆っているという議論もありませんでした

推測ですが、この論文を皮切りに様々な銀河の回転曲線が求められるようになったので、ダークマター史ではこの論文が発端のように扱われているのでしょう。そしてこの研究の延長として回転曲線問題を解決するためダークマターの存在が受け入れられるようになった、という議論の流れが正しいように思いました。

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Part 2へ続く

この記事ではツビッキーが銀河団の観測を通して目に見えないmissing massの存在を提唱し、その後ルービンの銀河回転曲線の観測からダークマターの存在が脚光を浴びるまでの歴史を振り返りました。

この続きは次の記事をご覧ください!

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